ある梅雨の晴れ間の
夕刻
一匹の蝉の幼虫が
スモークツリーの葉の裏で
その時を待っていました
野ばらに移り
ここと決めた
その場所で
身体をゆすりはじめます
背中が割れて
羽化が始まりました
無事に
頭が出てきました
身体を反らして
今、まさに
抜け出ようとしてます
ついに
全体が
抜け出しました
羽化の成功です!
ぶらさがって
羽を伸ばします
翡翠のような
翅脈がきれいです
翌朝
残された
抜け殻の
近くの
枝で
立派な蝉が
やすんでいました
きっと
これからはじまる
冒険に
心を躍らせていることでしょう
おおきな声で
鳴きますように
おおぞらを自由に
とびまわりますように
すてきな伴侶を
みつけられますように
この夏がとびきりよいものでありますように
ちいさな蝉の
幸せを願いました